銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

「盲導犬クイールの一生」その2

3カ月ほど経ったころ、子犬は、パピーウオーカーの仁井家のもとに預けられます。仁井家の人たちは、関西の人のようで、会話はすべて関西弁です。子犬は、鳥の羽のようなアザがあったので、鳥の羽を意味する「クイール」と名付けられます。名付けをするのは、パピーウオーカーの方たちの権利です。

飛行機に乗って行ったので、クイールは、少し疲れ気味です。しかし、仁井家の笑顔いっぱいの人たちに迎えられて、クイールは本当に幸せそうです。


ここでは、子犬が人間と仲良く、人間の愛情を感じてもらうというのがその目的です。

最初に盲導犬協会の人は、「どんなことをしても、叱らないでくださいね」と注意します。仁井家の人は、パピーウオーカーとして、クイールは3頭目だと言います。

 仁井家は、広いお庭のある家でそのお庭でクイールは、いたずらいっぱいに遊びます。


特に気に行ったのは子熊のピーちゃんのぬいぐるみです。クイールがピーちゃんを噛むと、ピーちゃんは、「ピー、ピー」と泣きます。それが面白いらしく、クイールは庭に連れて行って何時間も遊ぶのです。


仁井さんの夫婦には、子供さんがいないのでしょうか? 奥様は人間の子供に話しかけるように、いろいろと話しかけます。「何、笑おてんのん」「くーちゃん。この木は桜の木やで、今年はほんまに綺麗やったで。」、女子高生を指して、「あの娘らは、『女の子』やねん。お母さんも昔は女の子やったんやで」、草むらに入って蛇を見て、「あれ、蛇やない。怖い、怖い」、「あと3カ月でお誕生日やなあ」「お誕生日には、桜見に行こな」という具合にです。


お誕生日になると、盲導犬協会の人が迎えに来ます。盲導犬協会の人が迎えに来る直前の日曜日に、お母さんは、お父さんと一緒に、クイールと長い長い散歩をします。満開の桜の堤防を、ゆっくりゆっくりと歩きます。

「あと、2日したらお誕生日やなあ。嬉しいか」「そうしたらもうお別れやなあ」「くーちゃん、何、笑おてんのん、人の気も知らんで。」「クーちゃん、長いこと歩いて疲れたか?よう頑張ったなあ。」

 二日後盲導犬協会の人が来て、クイールを自働車に乗せます。クイールは、仁井さんたちを見て「何で一緒に乗ってくれへんねんやろ」と思っているようです。クイールは、泣かないのですが、本当に悲しそうな顔をして、仁井さんたちを見つめています(つづく)。

 

銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清