銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

お笑いコンビ「キングコング」の「偽造婚姻届」騒動


お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣さん(41)が、ある番組内で、身に覚えのないところで婚姻届を出されていたと明らかにしました。


西野さんは、冒頭で「婚姻届を勝手に出されたんです」と衝撃の告白をし、「最近、郵便受けを開けたら、数日前に届いていた区役所さんからの『婚姻届を受理できません』というお知らせがあったのです。そもそも、私は、婚姻願望もなく、婚姻届は出しておりません。」と話しました。


 婚姻届を出した人は、沖縄県の女性で、西野さんが全く知らない人だったそうです。

さらに、西野さんは、「僕の家にもう1通、手紙が届いて。差出人の名前と住所が書いてあって、中に返信用の封筒が入っていて、『西野亮廣さん ありがとう』とだけ書いた紙が入っていました。僕が手紙を入れたら、沖縄県の女性に届くようになっているんですが封筒の名前が西野花子になっているんですよ」と明かしました。

 

この沖縄県の女性が西野さんの婚姻届の署名押印を偽造した行為は、有印私文書偽造罪が成立する可能性があります(刑法159条1項)。有印私文書偽造罪が成立する要件としては、「行使の目的」で「他人の印章若しくは署名を使用」して、「権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画」を「偽造」することをいいます。


そして、これを婚姻届として、区役所に届け出る行為は、偽造有印私文書行使罪に当たり、同偽造罪及び同行使罪共に3月以上5年以下の懲役に処せられますが、両罪は、犯罪の手段及び結果の関係にあるときに当たりますので、一所為数法として一罪で処断されます(刑法54条後段)。また、偽造有印私文書を行使する行為は、公正証書原本不実記載罪の未遂罪(刑法157条1項、3号)に該当しますので、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられ、これらも一つの行為で数法に該当しますので、一所為数法として一罪で処断されます(刑法54条前段)。

有印私文書偽造罪、偽造有印私文書行使罪、公正証書原本不実記載罪の未遂罪は、刑法54条にいう一所為数法に該当しますので、3月以上5年以下の懲役の範囲内で処断されることになります(刑法54条1項「最も重い刑により処断する」)。


西野さんは、夜も眠れないほど悩んだとおっしゃっています。

他人の名前を騙って婚姻届けを出すという行為をする人もいるという、そんな一例でした。



弁護士法人銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清