銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

2016-01-01から1年間の記事一覧

金沢33 結婚そして長女の誕生

私は、昭和45年11月、司法修習生の後期修習のときに結婚しました。 2人とも若かったので、「しばらく子供は欲しくないね。2人だけの時間を楽しく過ごそうね」と話し合いました。 そして、次の年の昭和46年4月、金沢への赴任の支度をしている最中、…

金沢32 商号使用禁止の仮処分事件

もう一つ、仮処分事件で記憶に残っている事件があります。金沢のある料理店の商号「犀川熊の茶屋」が、債権者が使用する「熊の茶屋」の類似商号の使用に当たり、許されないと主張し、商号の使用禁止と200万円の損害賠償を求めました。 実際の事案を記載す…

金沢31 日照権仮処分事件

金沢地方裁判所における任官5年以下の若い裁判官の仕事は、民事合議事件の検討と、判決起案であり、もう1つは仮処分事件の処理でした。 民事合議事件は、①簡易裁判所からの控訴事件と、②一般事件のうち難しい事件で、行政事件、労働事件、金額の大きい事件…

金沢30 泉裁判官のこと

昭和48年4月に、泉徳治裁判官が金沢地裁に赴任されました。その年の2月に、転勤をされる予定の林輝裁判官から、「泉裁判官というのは、京大卒ですが、とても優秀な方ですよ」とお聞きしました。林輝裁判官も京大卒で、話しているうちに、下宿していた南…

金沢29 常陸宮殿下の表彰

金沢で、調停協会の総会があり、金沢地方裁判所所長と金沢家庭裁判所所長が招待されることになりました。 職員の葬儀のときと同じように、金沢地方裁判所所長の都合が悪く、加藤裁判長のところに「所長の代理で出てほしい」との要請がありました。その日は、…

8月の終わりに

今日の朝は、台風一過の気持ちが良い快晴でした。 百日紅の向こうに広がる青空を見ると、小学生のころの夏休みの最終日を思い出します。 夏休みの最終日にはこのような日差しの中で宿題の絵を書きました。絵を描きあげると、上手・下手はともかくとして、開…

金沢28 フェーン現象

金沢2年目の7月終わりのころだったと思います。 ニュースで、「明日はフェーン現象で、暑くなるでしょう。強い風に注意してください。」旨の注意がありました。 私の、中学校の理科の知識では、フェーン現象とは、「夏の日本海側でよく発生する現象で、非…

金沢27 職員の父親の葬儀

金沢に赴任して次の年のことでした。 総務関係のA事務局長が民事部の部屋に来て、「民事部のB書記官の父親が2日前に亡くなられ、明日葬式だということです。本来所長が行ってほしいのですが、所長は所用で行くことはできません。民事部の中で、どなたか行…

金沢26 変人からの脱皮

以前このブログで、高校時代、「清っさんは、ほんまに変わってるなあ」と何度も言われたことを書きました。 田んぼも山もそれほど多く持っていない専業農家で、4人の子供を育てることは大変だったのだろうと思います。両親のことを思い出すと、夏の間は、い…

金沢25 カシオ・ミニ

昭和47年7月ころ、「答え一発!カシオミニ」というCMソングが流行りました。どの番組を見ても必ず、目にし、耳にしたものです。 これまでの日本人は、そろばんか手計算でした。そのころも電卓はありましたが、10万円以上もするもので、しかも手の平に…

金沢24 新しい刑事部

昭和47年4月から裁判長も加藤裁判長から河合裁判長に変わり、右陪席も上野判事から小島寿美江判事に変わりました。小島寿美江判事は女性で、美人判事ということで有名な方でした。 「失礼ですが、旧姓は何とおっしゃるのですか」と聞きますと、 「白石で…

金沢23 白山登山その3

明日のご来光を楽しみにしながら、室堂で宿泊しました。男性も女性も雑魚寝です。 加藤裁判長がおっしゃいます。 「室堂まで来た人は、全員泊めなければならないんですよ。泊めなかったら生命に関わりますから」 「そうなんですか」 「明日は、午前3時半起…

金沢22 白山登山その2

2時間ほど歩くと視界が開け、はるかに遠く白山の峰が遠くに見えます。 「えっ、あんなに遠くまで歩くんですか」 私は、思わず心の中で叫びました。 加藤裁判長は、高山植物に詳しい方で「これがキンポウゲ」「これがハクサンフウロ」「これがクロユリ」「こ…

金沢21 白山登山その1

昭和47年6月ころ、書記官のEさんから「白山に登りませんか」と誘われました。民事部に異動された加藤裁判長が、「Eさんが言うなら、田中さんも行きましょうよ」と誘われました。時季は、山の天気が最も安定する7月末の土日、メンバーは、私、加藤裁判…

金沢20 人事異動

昭和47年3月、加藤裁判長が民事部の裁判長に、上野裁判官が高裁民集部右陪席判事にご栄転となりました。 加藤裁判長と上野裁判官そして何人かの裁判所書記官が転勤となり、刑事部で送別会が開かれました。そして、3人しかいない裁判官のうち2人が転勤と…

金沢19 模範六法

これまで、小六法というと、有斐閣の小六法か、岩波書店の小六法でした。おそらくそれまでの法律家は、100%近く上記2つの小六法を使っていたと思います。 私も、司法試験の受験のときは、岩波書店の小六法を使い、受験科目ごとに切り込んで、すなわち、…

金沢18 両親の来訪

時間が前後しますが、私の官舎は、うっそうと樹が茂っておりました。職員の人から前の住人の奥様は、肺結核に罹られたとも聞いていました。 夏の間は涼しくて良かったのですが、金沢の冬が厳しい気候と聞いていましたので心配でした。 10月末ころ、大阪か…

金沢17 日本海側気候

私は、大阪出身で、瀬戸内気候ないし太平洋側気候でしたので、冬もほとんど雪や雨は降りません。冬に縁側で日向ぼっこをした記憶がしっかりと刻み込まれています。 しかし、金沢は、典型的な日本海側気候です。 毎年、11月20日ころから翌年3月20日ま…

金沢16 なめ茸採りその2

私たち6人は、わいわい騒ぎながら1時間ほど山を登りました。 「ここは、ブナ林なんですよ。ブナの倒木が見つかり、運がいいと、山ほどなめ茸が採れますよ」 Eさんが説明しますが、全部のブナの倒木になめ茸が生えているわけではありません。 30分ほど歩…

金沢15 なめ茸採りその1

「田中判事さん。2週間後の日曜日になめ茸採りに行きませんか」 書記官のEさんが声を掛けてくれました。 「えっ。どこに行くんですか」 「白山の麓に、親戚の山があります。そこに行けば、天然のなめ茸が採れるんですよ」 「なめ茸って、ナメコのことです…

金沢14 詐欺事件の大事件の判決 その2

当時の判決は、すべて手書きであり、ワープロはない。判決は、その手書きの原稿ももとに、タイピストがタイプするのである。 私は、起案の時間の短縮のために、「被告人」「検察官」「司法警察員」「の当公判廷における供述」「の検察官に対する昭和 年 月 日…

金沢その13 詐欺罪の大事件の判決 その1

詐欺事件で、70歳の母親A子、45歳の息子B、金融機関の職員Cが共同起訴された事件があった。 A子、Bについては詐欺罪、Cについては業務上横領罪というものである。訴因は合計115件、A子・Bの共謀の詐欺事件が30件、A子単独の詐欺事件が60…

金沢その12 夜間令状当番

上野裁判官から、「裁判官は24時間労働なんだよ」とよく言われた。 その意味を思い知ったのは、夜間令状当番のときである。 1週間に2回、夜間令状当番があった。 夜中の午前2時ころに、当直の書記官から電話が掛かってくる。「判事さん。あと1時間ほど…