金沢15 なめ茸採りその1
「田中判事さん。2週間後の日曜日になめ茸採りに行きませんか」
書記官のEさんが声を掛けてくれました。
「えっ。どこに行くんですか」
「白山の麓に、親戚の山があります。そこに行けば、天然のなめ茸が採れるんですよ」
「なめ茸って、ナメコのことですよね」
「そうですよ。でも天然のナメコは、特別旨いですよ。大きいですからびっくりしますよ。もちろん、お迎えにあがりますよ」
「行きます。連れて行ってください。ナメコは大好きです」
こんな風にして、なめ茸採り行きが決まりました。
「どのようになめ茸は生えているのだろう。『大きい』といっても、どのような大きさなんだろう。」
全く見当がつきませんでした。
2週間後の日曜日、約束どおり、Eさんが朝8時ころ、私の家に迎えに来てくれました。そこから、白山を目指して進みます。山の広場のようになったところに車を駐車し、そこで、山登りの支度をして、1時間ほど歩きます。
「判事さん。熊が出るから、ラジオを付けていきましょう。わいわい話をしながら行くと、熊は自分から逃げていくんですよ。静かに歩いて、出合い頭に熊と出会うと、熊もびっくりして、『びっくり熊』になるんですよ」
変な冗談が出て、思わず笑いが出ました。
「びっくり熊になると、その熊に襲われることになるんですよ」
私は、ニヤニヤしながら、「では、びっくり熊にさせないように注意します」と答えました。
弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)