銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

2015-01-01から1年間の記事一覧

金沢その11 浅賀榮所長の思い出 一日一論文主義

昭和46年9月、石田金沢地裁所長に代わって、東京高裁から浅賀榮所長が着任された。 浅賀榮所長は、行政法の大家として有名な方で、分厚い行政法の専門書を出版されていた。 浅賀所長は、毎月1回、地裁の裁判官全員で、昼食会を開かれた。 1つの話は、2…

金沢その10 職員との交流その3 岩魚採り

7月中旬のころだった。 「田中判事さん、今度の土曜日の晩、岩魚採りに行きませんか」 E書記官から声が掛かった。 「ありがとうございます。行きますよ。何時にどこに集まったらいいですか」と聞くと、 「夜の9時ころ、ご自宅に迎えに行きますよ。岩魚は…

金沢その9 職員との交流その2

職員のJ課長さんが、私に言った言葉がある。 「私は、田中さんの前のK判事さんと喧嘩したことがあります。K判事は、私に命令口調で『・・・・をやってくれ』と言ってきたので、私は、『そんなことを急に言われたって予算もないし、そんなことはできません…

金沢その8 職員との交流その1

裁判所には、裁判所書記官、事務官、速記官、廷吏、技官などの職員がいる。 金沢地方裁判所では、約90名の職員だった。この数には、名古屋高裁金沢支部、金沢家裁の職員を含んでいたかもしれない。地裁の裁判官は、所長1名、民事部4名、刑事部3名の合計…

金沢その7 ある刑事事件について

先日、初めての刑事事件(金沢その2)のことを書いたが、もう一つ忘れられない強姦未遂事件がある。 若い23歳くらいのOLのA子さんが、いつものように金沢駅から降りて自宅に向かう途中に、人通りの少ない場所がある。そこに被告人3名が乗った乗用車が…

金沢その6 大名行列

もう一つ、忘れられない失敗談がある。 刑事部は、加藤裁判長、上野右陪席、田中左陪席の構成であり、雑談も含め和気藹々とした良い雰囲気だった。 開廷時間になると、その3人で50メートルほどの廊下を通って法廷に行くことになる。そのとき、私は、裁判…

金沢その5 七尾支部への出張と印鑑

金沢地裁では、金沢地裁本庁のほかに、甲号支部として七尾支部、乙号支部として小松支部と輪島支部があった。 七尾支部と小松支部には、各1人の裁判官が常駐していたが、輪島支部には裁判官は常駐せず、七尾支部の裁判官が出張していた。そして、七尾支部は…

金沢その4 歓迎会

今では考えられないことであるが、当時の飲み会は、カラオケで歌うのではない。皆、得意の芸を披露して座を盛り上げるのである。 金沢地裁刑事部の歓迎会は、4月の末ころであったと記憶する。 ビール瓶をマイク代わりにして、森進一の歌を歌うSさん。いい…

金沢その3 兼六園と裁判所

金沢地方裁判所は、金沢市丸の内にあり、金沢城の真下にある。そして、日本三大名園の1つである兼六園は、裁判所から歩いて5分の位置にある。当時は24時間無料開放されており、お昼休みに散歩することもできた。 赴任してまもなくの土曜日のことだった。…

金沢その2 刑事部合議

金沢地裁に赴任したのは、私と、同期の塚田渥裁判官だった。私は24歳、塚田さんは27歳だった。金沢では、民事部と刑事部の左陪席に、私と塚田さんのどちらかが座ることになると聞いた。そして、2人の在任期間は、3年間である。 刑事部の加藤義則裁判長…

金沢その1 金沢地裁赴任

金沢地裁から連絡があったのは、4月13日ころだった。 「遅くなりました。4月20日に荷物を入れていただいて結構です。荷物を入れる日と時刻を教えていただけたらありがたいと思います」とのことだった。 すぐに運送会社に連絡して、打合せをし、平成4…

判事補任命

幻の終了式の翌日、私宛に2通の電報が届いた。 「ハンジホニニンメイスル ナイカク」(判事補に任命する 内閣) 「カナザワチホウサイバンショハンジホにホスル サイコウサイバンショ」(金沢地方裁判所判事補に補する 最高裁判所) 「えっ 金沢?」 全く予…

司法研修所卒業式

二回試験は、全員が合格したが、裁判官に対する任官拒否が七名出たことは、前回のブログで述べた。私のクラスの7組からは、任官希望者は全員任官することができ、任官拒否者は出なかった。 昭和46年4月5日、司法研修所において、司法研修所卒業式(終了…

裁判官任用試験その2

この面接で、矢口人事局長から言われた「君は、元来優秀なのに、勉強が足りないのではないの。」という言葉は、私の胸にずしりと響いた。酒やたばこをのみ、麻雀やパチンコをして遊び呆けていたことは、すべて人事局長にはお見通しだったのである。 中国の故…

裁判官任用試験その1

裁判官任用試験は、面接である。 私は、もともとは弁護士志望だったが、野崎判事から裁判官になることを勧められて裁判官志望に変更したことは、既にブログで述べたとおりである。したがって、7年くらい裁判官をして、それから辞めて弁護士になってもよいと…

二回試験

二回試験でも、要領の良さが出てくる。 検察では起訴にする。検察起案では、起訴猶予ということは、まずあり得ない。刑事弁護では無罪の弁論にする。そうでないと、刑事弁護の意味がない。刑事裁判では、有罪の結論にする。検察が起訴した事件は99.5%有…

二回試験と肩叩き

二回試験は、ほとんど全員が合格する試験であり、普通にやっていれば落ちる試験ではなかった。 しかし、裁判官を目指す者にとっては、成績が良くなければ裁判官になれないと言われていた。私は、修習時代に、随分遊んだので、裁判官になれないかもしれないと…

二回試験の勉強

二回試験は、司法研修所の卒業試験のことを言う。司法試験が一回試験であるので、司法研修所卒業試験が、二回試験と言うらしい。 昭和45年12月になって、二回試験の勉強をしなければならないという空気が教室にも漂い始めた。 二回試験は、民事裁判、刑…

秋の夜を……

秋の夜を ひたすら学ぶ六法に 恋という字は 見出でざりけり 元大阪府知事黒田了一様の短歌ですが、当時の、我々司法試験の受験者は、大部分の人が知っている短歌であったと思います。 恋も愛も振り捨てて、ひたすら無味乾燥な六法に打ち込んでいた当時が懐か…

後期修習の始まり

大学卒業、修習時代に掛けて、K子との別れ、妻との出会い、結婚など忙しい時期だった。妻との恋愛、結婚を書けば、20回くらいこのブログを占拠することになるが、妻から恋愛、結婚のことは一切書かないでほしいと釘を刺されているので、ここでは省略する…

裁判修習

裁判修習は、民事裁判修習4か月と刑事裁判修習4か月に分かれる。 私は、検察修習、弁護修習を終えて、野崎判事のいうとおり、裁判官になろうという意思を固めていた。 その理由は、①時間に余裕がありそうだったこと、②最終判断ができること、③野崎判事のい…

エレベーター事故

弁護修習の中頃、大阪弁護士会館で講義があった。その帰り、5階から1階までエレベーターに乗ったが、定員11名のところ、17名もの多数が乗り込んだ。 「おい、大丈夫か?ちょっと乗りすぎやないか」という声もあったが、誰も降りようとしなかった。 エ…

死体解剖見学

検察修習だったと思うが、大阪大学附属病院において、死体解剖の見学があった。 死体解剖には、司法解剖と行政解剖がある。 司法解剖は、検視または検案によって犯罪性があると認められた場合であり、行政解剖は、死体解剖保存法に基づいて主に監察医が行う…

パトカー試乗

やはり検察修習中だったと思う。 パトカー試乗という修習で、パトカーに乗せてもらった。パトカーの刑事さんは2人で、パトカーの後ろに修習生2人が乗せてもらい、街の中をパトロールする。 「そこの自転車、2人乗りは危ないですよ。降りなさい」というと…

スリ係専門刑事修習

検察修習で、スリ係専門刑事と一緒に一日を過ごすという修習があった。 スリ係専門刑事は、とにかく繁華街をひたすら歩き、スリを現認すれば、現行犯逮捕するという仕事である。 スリは、人の胸ポケットや後ろポケットに入っている財布をあっという間に盗む…

弁護修習

検察修習のあとは、弁護修習だった。 指導教官は9期の中坊公平先生、イソ弁(勤務弁護士)は18期の谷沢忠彦先生、共に京都大学卒業で、私の先輩だった。 中坊法律事務所での司法修習生は2人目で、B班の浜本さんが昭和44年7月末から11月末、A班の私…

検察修習

司法修習の現地修習は、検察、弁護、民事裁判、刑事裁判の順だった。 検察修習は、最初の修習だけに楽しく修習させていただいた。取調べ修習で、恐喝事件の被疑者を取り調べたが、普段真面目なタクシー運転手だったが、つい言葉が過ぎて、恐喝の構成要件に該…

即日起案の後日談その2

裁判官は、民事事件で、審理する事件を200件〜250件抱えている。また、20件〜25件くらいの新しい事件が入ってくるので、月に20件〜25件を処理しなければ、事件がどんどん溜まってくる。このうち、ほとんど起案に時間が掛からない公示送達事件…

即日起案の後日談

即日起案は、後々の法曹生活、特に裁判官生活において、スピーディな仕事をする方法を学んだことで、非常に自信になったということは、前ブログで書いたとおりである。 後日談であるが、裁判官になって8年くらい経ったとき、友人の裁判官の家を訪ねたことが…

即日起案と翌日起案

司法研修所では、民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護の5科目があり、それぞれに即日起案と翌日起案があった。 即日起案も翌日起案も、判決起案、起訴状や論告起案、訴状や準備書面起案、弁論要旨起案などをし、自分が考えた問題点を注記するとい…