銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

即日起案と翌日起案

 司法研修所では、民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護の5科目があり、それぞれに即日起案と翌日起案があった。
 即日起案も翌日起案も、判決起案、起訴状や論告起案、訴状や準備書面起案、弁論要旨起案などをし、自分が考えた問題点を注記するという形式である。

 即日起案は、白表紙の厚さ1㎝くらいの事件記録を朝9時30分ころに渡され、その日の午後5時ころまでに起案を提出するというものであり、翌日起案は、土曜日に帰るときに、白表紙の厚さ1㎝くらいの記録を渡され、月曜日に起案を提出するというものである。
 即日起案も翌日起案も、スピードが試される。いかに早く起案の構想を組み立て、いかに早く起案をするかである。
 即日起案では、まず記録を読む。そして、何が問題点であるかを掴む。その次は、構想である。どういう順序で何を書くべきか、すなわち、目次を作り、その目次に何を盛り込むかを頭の中で考える。それをほぼ即時に考える。そして、すぐに書き始める。
 記録読み2時間、構想10分、起案1時間、見直し20分という時間配分である。なぜ構想の時間が短いか、それは、記録を読むうちに、構想を作り始めているからである。また、起案をしながら構想を具体化し、当初考えた構想を訂正しながら起案する。上記の時間割で行くと、ほぼ午後2時〜2時30分ころには起案はできあがっていた。いつも即日起案の提出は、クラスでは一番早かった。
 当時は、パソコンもワープロも無かったので、すべて鉛筆と消しゴムである。この点、現代では、パソコンもワープロもあり、コピー、貼り付け、削除、訂正が容易であるから、天国のようである。

 起案を提出し、いつものメンバーに、「麻雀に行こうか」と言っても誰も答えないので、1人で帰ることが多かった。
 翌日起案も、全く同じことで、違いは寮生同士で議論ができることである。上記のとおり、土曜日に白表紙記録を渡され、月曜日に提出することが多かったので、翌日起案ではなく、翌々日起案が正確である。私は、なるべく、土曜日に起案を完成し、日曜日は自分の自由時間に充てることを常としていた。当時は、土曜日は半ドンではあったが、休日ではなかった(ちなみに、「博多どんたく祭り」の「どんたく」は、オランダ語の日曜日を意味するが、日本では、休日として使われるようになり、「半ドン」は、半分休日の意味である。)。

 このように、特に、即日起案は、後々の法曹生活、特に裁判官生活において、スピーディな仕事をする方法を学んだことで、非常に自信になったと思う。例外的な大きな事件を除いて、通常の事件の判決起案であれば一日で起案が完成できるということである。

  弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)