銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

即日起案の後日談その2

 裁判官は、民事事件で、審理する事件を200件〜250件抱えている。また、20件〜25件くらいの新しい事件が入ってくるので、月に20件〜25件を処理しなければ、事件がどんどん溜まってくる。このうち、ほとんど起案に時間が掛からない公示送達事件判決や欠席判決が約5件〜7件ほどあり、取下げも2件くらいある。やや困難な事件の判決は、いくら即日起案しても、1か月に5件までが限度である。なぜなら、1月に日曜日が4〜5回あるので、即日起案をすれば、4〜5件は書ける計算になる。そうすると、月間12件は判決と取下げで終了することになるが、後の8件〜13件は、和解で処理しなければならないし、和解で13件以上を常に処理できれば、判決を書く件数は減り、手持ち事件はどんどん減ってくることになる。

 私は、裁判官時代、何件判決を書いたか記憶がない。しかし、欠席判決などの簡単な判決や刑事事件判決を含めると何百件単位の事件を判決で処理したのではないかと思う。
 しかし、私は、1件を除き、すべて言渡し期日を延期したことはなかった。
 その1件は、刑事事件であったが、昭和63年ころ、初めてワープロを買ったときだった。
 ワープロを使って初めて判決起案をしようと思ったが、ワープロの使い方が良く分からず、試行錯誤を繰り返すうちに、判決言渡し期日までに言い渡せなくなってしまったのである。
 刑事事件では、銃砲刀剣類所持等取締法違反とか罰金等臨時措置法3条1項1号など、日常生活で見られない言葉が続く。例えば「じゅうほう」と打っても「重砲」や「重宝」など関係がない言葉が続き、なかなか目的の「銃砲」につながらない。

 1週間だけの延期であったが、幸い弁護人が優しい人だったので、「分かりました。いいですよ」と言っていただき、本当に、当事者の方々に申し訳ないと心から思うと同時に、弁護人の優しさに感動した。私にとって、最初で最後の納期遅延だった。

 弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)