銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

金沢その11 浅賀榮所長の思い出 一日一論文主義

 昭和46年9月、石田金沢地裁所長に代わって、東京高裁から浅賀榮所長が着任された。
 浅賀榮所長は、行政法の大家として有名な方で、分厚い行政法の専門書を出版されていた。
 浅賀所長は、毎月1回、地裁の裁判官全員で、昼食会を開かれた。
 1つの話は、2013年5月に猫のブログ(銀座ファースト法律事務所弁護士 田中清のブログ)の「ろくろとひねり」で書いたとおりである。
 もう1つの話は、「一日一論文主義」の話である。浅賀所長は、次のような話をされた。

 「私は、非常に遠いところに家を買ってしまった。しかし、風光明媚だし、静かなところである。何よりも良かったと思ったのは、始発駅だったことである。始発駅だから必ず座って行ける。片道一時間、往復二時間の時間を利用して、私は、法律の論文を一日に一論文、読むことにした。そのようにすると、最新の論文を吸収することができる。そして、通勤の時間が無駄にならない」
 私は、この話に大きな感銘を受けた。なるほど、小さな積み重ねかもしれないが、毎日の知識の貯金が大きな財産になるに違いない。

 「よしっ。明日から私も一日一論文を読もう」と心に誓った。といっても、そんなに手軽に論文があるわけではない。一番手軽に読みたい、読まなければならないと思ったのは、判例時報判例であった。
 私は、一日に三判例を読み、これを一論文とすることにした。新しくノートを買い、表紙に一日一論文主義と書き、三つの判例の要旨を書くことにした。さらに、判例時報を読み尽くすと、最高裁判所判例解説の判例解説を読んだり、ジュリストの重要判例解説を読むことにした。そのようにすると、一日一論文を読むことが日課となり、論文が頭の中に蓄積されていくのが楽しくなった。

  弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)