銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

金沢その12 夜間令状当番

 上野裁判官から、「裁判官は24時間労働なんだよ」とよく言われた。
 その意味を思い知ったのは、夜間令状当番のときである。
 1週間に2回、夜間令状当番があった。

 夜中の午前2時ころに、当直の書記官から電話が掛かってくる。「判事さん。あと1時間ほどで、令状があります。緊急逮捕状です。」などという。それから1時間は、眠るわけにいかない。1時間で来なくて2時間くらい掛かることもある。
 緊急逮捕とは、刑事訴訟法210条に基づく逮捕で、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。」とある。要するに、警察官が緊急逮捕をしたときは、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならないので、裁判官を夜中でも叩き起こすことになっているのである。
 午前3時に警察官が来て、記録を読み結論を伝えるときは午前4時を回っている。
 こうした、緊急逮捕状には、刑事訴訟法210条の要件を満たしていないことが結構多かった。警察官と議論し、「この緊急逮捕状は出せません」というと、警察官は、「そこを何とか出していただけませんか」と粘るのであるが、もちろん、警察官の情にほだされて、結論を変える訳にはいかない。
 このようにして、ほとんど徹夜状態で、出勤することになる。夜間令状の当番は、月曜日夜と木曜日夜などと決まっているので、月曜日昼の刑事事件の合議の法廷には影響がなかったが、合議の法廷が火曜日であれば眠くて悲惨な状況になったと思う。

 弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)