金沢その１ 金沢地裁赴任

　金沢地裁から連絡があったのは、４月１３日ころだった。
　「遅くなりました。４月２０日に荷物を入れていただいて結構です。荷物を入れる日と時刻を教えていただけたらありがたいと思います」とのことだった。
　すぐに運送会社に連絡して、打合せをし、平成４６年４月２０日の午前１０時と指定し、了解を得た。
　そこで、４月１９日の朝に東京を立ち、その日は、金沢の旅館に宿泊することにした。

　そのころは、荷物が少なかったので、２トントラック車１台で済みそうだった。しかし、妻は妊娠していたので、大事を取って、３人の荷物運びをする人夫(運転手を含めて４人)を注文した。
　４月２０日は、大雨だった。しかし、びっくりしたのは、裁判所の刑事書記官室から５名の書記官や事務官が応援に来ていただいたことである。
　荷物が少ない上に、９名(私を入れて１０名)もの人が働いたので、１時間もしないうちに、荷物は片付いた。
　金沢の人たちの温かさを最初の日に感じると共に、非常に恐縮した日であった。
　その日は、荷物の片付けに専念して、４月２１日に初出勤することにした。

　宿舎は、３Ｋ(６畳、６畳、４畳半、台所)で、汲取り便所と風呂がついていた。築３０年くらいの古い家で、隙間風が冷たかった。庭は３０坪くらいあり、広かったが、森のように鬱蒼としており、家が暗かった。

　　弁護士　田中　清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)