銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

判事補任命

 幻の終了式の翌日、私宛に2通の電報が届いた。
「ハンジホニニンメイスル ナイカク」(判事補に任命する 内閣)
「カナザワチホウサイバンショハンジホにホスル サイコウサイバンショ」(金沢地方裁判所判事補に補する 最高裁判所

 「えっ 金沢?」
 全く予想外の任地だった。昭和43年の8月に1人で能登旅行をしたばかりである。「こんなことなら、能登旅行をしなければ良かった」「もっと別の場所に行きたかったなぁ」などと思った。
 面接のとき、人事局長に対し、「場所はどこでもよいのか」と聞かれたとき、「場所はどこでもいいのですが、あえて言うと、太平洋側を希望したいと思います」と答えたこと、局長が「ほう、それはどうしてかね」と聞かれるので、「日本海側は、冬季の天候が悪いので、太平洋側を希望したいのです」と答えたこと、局長は「しかし、裁判官になると、太平洋側も日本海側も、どちらにも行くことになるよ」と言われるので、私は「いや、どちらでも結構です」と答えたことを思い出した。
 このとき「初めから金沢に行かせるつもりだったのだな。それなら、太平洋側がよいか、日本海側がよいかなどと聞かなければよいのに」と思った。
 しかし、しばらくすると、正式に裁判官に任官できた喜びの気持ちが湧いてきた。

 次の日、金沢地方裁判所に電話をし、いつ赴任したら良いかと聞いたところ、前任の判事補が、まだ金沢におり、裁判所宿舎が空かないので連絡するまで待ってほしいということだった。

 いつの日か忘れたが、それから数日後に判事補任命式があり、最高裁判所まで出掛け、最高裁判所裁判官司法研修所裁判教官と新任判事補で歓迎会があり、立席でお酒と食事をご馳走になった。このとき、我がクラスの安國民事裁判教官と私が話していたところ、最高裁判事がやってきて、安國教官に対して、「君はどこに行くの?」と尋ねられ、安國教官が「いや、私は司法研修所の教官です。この田中君が、今度金沢地裁に赴任します」と返答されていたことを、昨日のことのように思い出す。

弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)