銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

金沢19 模範六法

 これまで、小六法というと、有斐閣の小六法か、岩波書店の小六法でした。おそらくそれまでの法律家は、100%近く上記2つの小六法を使っていたと思います。
 私も、司法試験の受験のときは、岩波書店の小六法を使い、受験科目ごとに切り込んで、すなわち、憲法民法、刑法などと小冊子にして使っていました。しかし、有斐閣岩波書店ともに、小六法は主要な法律には関連法の索引は付いていましたが、裁判例は全く載っていません。
 私は、受験のときから、「どうして有斐閣岩波書店は、裁判例を各条文ごとに載せないのだろう、私が有斐閣岩波書店の経営者なら、裁判例を各条文ごとに載せるだろう。」といつも思っておりました。
 そんなとき、金沢の一番大きな本屋で何か面白い本はないかと探していましたら、模範六法(三省堂編)が見つかりました。
 早速、その六法を買い求めて、常に座右に置くことにしました。

 その後、裁判官室で法律の議論をしているとき、私が「この点には、このような判例がありますよ。」と言いますと、議論が収束してしまうのです。特に最高裁判決が見つかったときなどは、加藤裁判長から、「早速その判例を調べてきてください」ということになります。
 このようなことが3〜4回続いたとき、加藤裁判長が、「田中さんは、随分判例を知っているなあ」と驚かれましたので、「実は、私は、このような六法を使っているんです」と言って見せました。加藤裁判長も上野裁判官もびっくりして、「こんな便利な六法があるなら、私も買うよ」とおっしゃいました。
 こうして、刑事部のみならず民事部でも大評判となり、三省堂模範六法の売上に随分貢献したのです。
 それから私は、現在までずっと三省堂模範六法を常用しています。

 確か三省堂は、倒産したが、この模範六法の好調の波を受け売上が飛躍的に伸び、息を吹き返したと聞いていますが、確かではありません。
 しかし、現在、弁護士であれ、裁判官であれ、三省堂模範六法を使っており、今や有斐閣岩波書店の六法を使っている人は余り見たことがありません。それほど、この六法は便利なのです。


  弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)