金沢22 白山登山その2
2時間ほど歩くと視界が開け、はるかに遠く白山の峰が遠くに見えます。
「えっ、あんなに遠くまで歩くんですか」
私は、思わず心の中で叫びました。
加藤裁判長は、高山植物に詳しい方で「これがキンポウゲ」「これがハクサンフウロ」「これがクロユリ」「これがチングルマ」などと次々と花の名前を教えていただきます。
私が「いやぁ、随分詳しいですね」と言いますと、「知っている花はね。知らない花はもちろんありますよ。そんなときは、ミヤマシラネソウと言っておくんだよ」と言って笑われました。
天気はすごく良かったです。「この分だと、明日、ご来光が見えるね」と加藤裁判長がおっしゃいました。
室堂に着いたのは午後5時ころです。あんなに遠く見えた室堂もゆっくり歩いているといつの間にか到着するものです。
このときの白山での「遠く見えた室堂もゆっくり歩いているといつの間にか到着する」という実感は、その後の私の人生での教訓になりました。
裁判記録には、1mを超す記録も沢山あります。そんなときでも、最初から圧倒されて読まないでいると、いつまで経っても記録は読めません。そうです。山登りと一緒で、「ゆっくり休まず」歩いているといつの間にか、頂上に到達するのです。記録も「ゆっくり休まず」読んでいるといつの間にか、読み終えてしまいます。私は、それからの裁判官生活や訟務検事生活、弁護士生活で、大きな記録に当たったときは、いつも白山登山のことを思い出します。
それほど、白山登山の印象は強烈だったのです。
弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)