銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

大学その21 北川善太郎予備ゼミ

 京大のゼミ(本ゼミ)は、3回生の10月から4回生の9月(翌年)までである。したがって、本ゼミが始まる前の6か月間に、大学側の配慮で、予備ゼミを開いていただいた。この予備ゼミは、大学の助教授が中心となって希望者に開講するものだった。
 3回生になって、私は、迷いもなく民法の北川善太郎助教授の予備ゼミに入った。北川先生は、京大理学部に入学されたが、法学部に転入学されたという経歴を持っていらっしゃったが、非常に穏やかな頭が切れる先生であるという印象だった。
 北川先生からは、典型担保と非典型担保に関する11個の問題を出された。
 抵当権、先取特権、不動産質権、留置権、保証債務、代物弁済予約、相殺予約、買戻特約、売買予約、譲渡担保、所有権留保(順不同)である。
 丁度、そのころは、代物弁済予約仮登記について、社会問題化しており、少額の債権で、債務不履行の際には、高価な不動産につき代物弁済予約の仮登記を付しておくことの当否が問題となっていた。下級審においては、債権額に対し、数倍以上の不動産について仮登記を付したときは、民法90条の公序良俗違反を適用して無効とする判決が相次いでいたが、債権額の3倍以内ならば、さすがに公序良俗違反を適用することはできなかった。しかし、最高裁昭和42年11月16日第1小法廷判決(民集21巻9号2430頁)は、債権者(仮登記担保権者)による当該不動産の丸取りを認めず、不動産価格が債権額を上回る分の清算義務を認めた。
 この判断には、京大教授から最高裁判事になられた大隅健一郎教授が関わっておられ、画期的な判断を示されたことを誇らしく思った。
 私たちの予備ゼミは30名程度だったが、昭和42年4月から9月までだったので、代物弁済予約の上記最高裁判断が出される直前だった。しかし、この予備ゼミでは、友人の畑守人(後の大阪弁護士会会長)が、既に、債権額と不動産価格の精算を認めるべきであると発表していたことが記憶に残っている。
 そして、この予備ゼミで、典型担保と非典型担保を勉強したのは、画期的なことだったと思う。
 この北川先生は、2013年1月に80歳で亡くなられたが、法学での私の最初の恩師というべき方であった。
 弁護士 田中 清