銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

出生その7 牛

子供のころは、トラクターが無かったので、すべて牛を使って耕していた。牛は、子牛を博労(バクロウ。牛の業者)が持ってきて、農家に養育を委ねる。農家で牛を農耕に使いながら大きな大人の牛にして博労に引き渡す。そのとき、博労は牛を大きくしてもらったお礼としていくばくかのお金(私は、子供だったので、その養育代金の額をしらない)を支払い、また、子供の牛を預かるというシステムである。子牛の養育契約であり、請負契約類似の契約であろう。
牛は、ウマヤという牛小屋で飼い、主食は藁を刻んだマゼであり、お湯に米糠を溶かしたものに大根や葉菜などの野菜が入った汁を与える。
冬の間は、牛の出番がないので、専ら牛は、ウマヤでゴロゴロと寝ている。春に、牛を外に出し、苗代作りの鋤を引かせ、田んぼを耕す。しかし、牛の力が有り余っているので、しばらくは、田んぼの中で牛の手綱を引き、疲れるまで走らせる。それからは、牛の大活躍である。毎日のように、田んぼに鋤入れをし、水を入れて代掻きをする。それが、田植えが終わるまで続く。
「ウマヤ(馬屋)」「マゼ(馬餌)」「バクロウ(馬喰)」などの名前が残っていることからすると、昔は、牛ではなく馬を飼っていたのかもしれない。

  植田暮れて 動かぬ牛を もてあます。
中学生のころに私が詠んだ俳句であるが、雑誌に入選した句である。したがって、中学生ころまでは、牛を飼っていたことになる。
牛は、温厚である。滅多に暴れたりしないし、従順に人間の言うことを聞く。農耕に働かせるようにするのは、父の仕事である。牛には鼻輪があり、それに手綱を付ける。右に曲がらせるときは、鼻輪を引く。左に曲がらせるときは、牛の右腹を手綱で打てば、牛は左に曲がる。
女性や子供の言うことは聞かない。上記の俳句は、子供のいうことを聞かない牛を持て余している句である。
大きなつぶらな瞳をしていて、マゼをやったり、牛汁を飲ませるときは、嬉しそうに首を振る。
弁護士 田中 清