銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

高校19応援団

 赤尾の豆単の勉強は、毎日欠かさずに続けられていた。私とスーちゃんのコンビで、赤尾の豆単暗記を始めたことは、クラスでアッという間に知れ渡り、評判になった。そこで、同じようなコンビで赤尾の豆単を覚えるというチームが4つくらい出来上がった。しかし、完走したのは私とスーちゃんチームだけだったように記憶している。

 高校3年生の10月初旬に体育祭が予定されていた。1年生、2年生、3年生をそれぞれAチームからHチームまでに分け、1,2,3年生が一体となって競技をするのである。
これに応援団を組織するのが慣わしである。クラス会で討論した結果、「高校生活での最後の体育祭だから、応援団を組織して頑張ってやろう」ということで決議した。問題は、誰が応援団をやるかである。高校3年生で入試も迫っている。誰も自分で応援団員を買って出るというものは居なかった。
 過去に応援の経験がある村江は、直ぐに選出されたが、あと2人が決まらない。そこで、投票の結果、私とスーちゃんが選ばれる結果になってしまった。
 選ばれた限りは、責任を果たさなければならない。その日の放課後、私と村江とスーちゃんが居残り、どういう形で応援をやるかについて計画を練った。この会議には、他クラスから応援に選ばれたブンチン(木村)も入った。ブンチンは、以前からの親しい知合いだったので、何の抵抗もなかったし、むしろ、ブンチンの参加は心強かった。
 村江とブンチンは、応援を過去2年間やったベテランであり、彼らに応援の基礎を教えてもらった。
 応援には、「1拍子」「2拍子」「3拍子」「3・3・7拍子」「祇園囃子(ぎおんばやし)」(チャンチャンチャチャチャ、チャンチャチャチャ)「妙見囃子(みょうけんばやし)」(ドンツク、ドンドンツクツク)があり、素手での拍子と、扇を使っての拍子があった。
村江から掛け声をどのようにやるかについて、見本を見せてもらった。「まずはイチビョオオーシ、ソオーラコイ」。村江がびっくりするほど大きな声で怒鳴った。「清さんもやってみぃよ」というので、「分かった」と言って、「まずはイチビョーシ、ソォラコイ」と言ったが、全然声が出ていない。村江が、「あかん、あかん、もっと大きな声を出さんとあかん」と言うので、何度かやってみて少し声が大きくなったが、村江もブンチンも首を横に振る。
村江が、「清さん、ちょっとこっちに来いや」と言って、放課後の誰もいない廊下に連れて行った。
「清さんは、まだ恥ずかしがっている。恥ずかしがっている間は、声が出ぇへん。さぁ、ここには誰も居らへんから、思い切りやって見ぃや」と言った。
 私は、50メートルはあると思われる廊下の端から、声を限りに今まで出したこともない大声を出して、「まずはイチビョオオーシ、ソオーラコイ」と言ってみた。
「よっしゃ。それで合格や」。村江とブンチンが手を叩いて喜んでくれた。同じようにスーちゃんも大声を出すことができた。
「続いてニビョオオーシ、ソオーラコイ」
「続いてサンビョオオーシ、ソオーラコイ」
大声を出すことが楽しくなった。
弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)