銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

大学5 南禅寺南陽院下宿

 以前にも書いたように、国鉄(JR)高槻駅から私の村までの最終バスは午後9時25分発だった。
 空手道部に入り、練習や飲み会で遅くなると帰るバスがない。しかし、歩けば、高槻駅から自宅まで、1時間掛かる。さらに、親から離れて下宿したいという願望は日に日に高まっていった。見渡してみると、クラスメイトの8割以上は下宿している。下宿しているクラスメイトが羨ましくてたまらなかった。
 そこで、両親に無断で、下宿先を探すことにした。
 大学の西部キャンパスには、下宿先募集、アルバイト先募集などの貼り紙があることは知っていたので、安い下宿先を探すことにした。その中で、南禅寺南陽院に3畳間月額2500円の物件を見つけた。これ以上場所が良くて、安い物件は見当たらない。ただし、1年間のみという条件であった。物件希望者は、次の日の午後3時に貼り紙の前に集まることになっていた。私は、クラスメイトの江川にジャンケン要員を頼み、翌日の午後3時に西部キャンパスの所定の場所に行った。
 南陽院の希望者は多く、10数名が居たと思う。私はジャンケンで負けたが、江川が勝ち進み、ついに物件をゲットすることができた。
 南陽院は、南禅寺塔頭の1つで山門の横の小道を入ったところにあり、有名な金地院の向かい側である。金地院の住職であった金地院崇伝は、徳川家康に可愛がられ、キリスト教禁止や、方広寺の鐘名事件の首謀者と伝えられる。金地院は、美しい鶴亀の庭園が有名である。一度庭園を見学したが、こじんまりと纏まった庭園で、東照宮が祀られていたことが印象的であった。なるほど、家康に可愛がられたことだけはあると思った。
 一方の南陽院は、和尚が早くに亡くなり、その奥様が3人の子供を抱え、下宿料などで生計を立てていた。特に拝観料を取るような庭園もない。

 
 両親に「下宿させてほしい、もう決めてきた。」というと、「約束が違う」と激しく叱られた。約束とは、国公立現役、自宅から通えるところ(下宿はしない)という約束である。しかし、ジャンケンの難関を突破し、決めてきたことなので、私も頑として譲らなかった。午後9時25分の最終バスは早すぎて何もできないこと、物件は安いこと、環境がいいことなどを訴え、最終的に承諾を得た。
 弁護士 田中 清