大学６ 南陽院下宿その２

　南陽院の下宿は、羊小屋を改造したものということで、６部屋あった。私の部屋は、一番小さな部屋で、３畳間であり、畳２畳に二階建ての押入れ１畳だった。下に荷物を入れ、上に布団を引いて就寝するというもので、非常に合理的だった。簡単な机と椅子も置いてあり、勉強をしようと思えばできる環境だけは揃っていた(しかし、全くと言っていいほど勉強しなかったが……)。
　下宿に入るときに、羊小屋の３人の学生が１年間留学するので、その間の１年だけ下宿させるという条件だった。
　下宿から大学までは歩けば３０分〜４０分くらい掛かる。自転車は必需品だと思った。友人から裁判所の競売品を買えば安いということを聞いて、裁判所から競売品を買って売ってくれる業者から、一番安い１０００円の婦人物自転車を買った。婦人物であろうと、用を足して安ければ良いと思った。下宿は、風呂が沸いたら声を掛けてくれるという家庭的なものだった。おかげさまで、奥様と３人の子供ともすっかり親しくなった。
　南禅寺から、哲学の道を通り、法勝寺町、黒谷から抜け道を通って吉田校舎まで約１０分、行きは立ち寄りの余裕はなかったが、帰りは、大好物の回転焼(太鼓焼)を買ったり、ラーメンや餃子を食べたりして帰るのが楽しみだった。おかげで、大学の周りの回転焼店６店舗の味の評価をできるようになった。
　２週間に１回くらい、高槻の自宅に帰った。母が一番喜んで、精一杯のご馳走をしてくれ、下宿に帰るときは両手一杯にお土産を持たせてくれた。

　南陽院会というのが、今も続いている。４月２４日、主に６０代の東京在住者が１１人、新宿の寿司屋に集まった。私のメールをわざわざ探して呼んでくれたので、初めて出席することにした。貧乏学生だった当時の思い出に花が咲き、楽しかった。
　弁護士　田中　清