大学30 三ヶ月章東大教授の出張講演と「眼から鱗」
3回生の秋、三ヶ月章東大教授が京大に出張講演に来られた。
三ヶ月先生は、非常に話が上手な人で、人を惹きつける魅力があった。その中で、次のようなお話をされた。
「憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法いろいろな法律があります。労働法もあるでしょう。行政法もあるでしょう。しかし、これらを別々に理解しようとしてはいけないのではないでしょうか。法体系の底に流れているマグマがあるのです。そのマグマの上に憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法などの法律が火山のように突き出ているのです。富士火山帯という火山帯の中に、浅間山、富士山、箱根山、伊豆大島、三宅島などの火山が連なっているのです。このように法体系の底に流れているマグマを理解したとき、初めて法律が有機的に連なっていることが分かるのです。マグマは、法常識や取引慣習や信義則や権利の濫用や実質的平等原則を含んだドロドロとしたものです。このマグマを理解するように努めてください。」
この講演で、私は、「眼から鱗」の体験をした。
後日、刑法の勉強をしているとき、三ヶ月先生のおっしゃったこのマグマが分かった気がした。私が、法律のことを「面白い」と感じたのは、このときだったし、それからの憲法、民法、商法、民事訴訟法、国際私法の勉強をするうち、法体系の底に流れているマグマを私なりに理解し、本当に法律のことを面白いと感じるようになった。
弁護士 田中 清