銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

大学37 「悔しさに……」

 3回生3学期の昭和43年3月9日だった。
 私は、いつものとおり、法律相談部の部室で皆と冗談を言い合いながら遊んでいたとき、誰かが「おい、みんな、司法試験の願書を出したか?」と言うのである。
 「ああ、出したよ」と私が言ったとき、林が「えっ、田中、お前も司法試験受けるの?」と大きな声で言ったのである。
 「そりゃあ、俺だって受けるよ」と言い返すと、「ほんまぁ、へぇー」と、さも意外だというように言われたのである。
 確かに、私は、総務で忙しくしていたし、人前で勉強をしている風には見えなかったかもしれない。
 しかし、「それは、そんな言い方はないだろう!」と非常に悔しい思いをした。

 このときは、淡雪が降る寒い日だった。高槻駅からバスに乗って車窓の外を眺めつつ、「確かに、俺は勉強が足りない。皆に、お前みたいな者が司法試験に受かるはずがない。なぜ、お前のような者が受けるのだと思われても仕方がない。しかし、まだ、短答式まで2か月ある。絶対に司法試験に受かって、林を見返してやる!」と心に誓った。

 このとき詠んだ短歌は、今でも忘れることができない。

   悔しさに、唇を噛み 見つめいる、車窓の外に 淡雪の消ゆ

 余程、悔しかったのだろう。このときの情景、車窓の外の淡雪の消える様は、今でもはっきりと覚えている。
 短答式まで2か月、「この日から死にもの狂いで勉強しよう」と本心から思った。もう、講義はない。期末テストもない。あと、2回くらい法律相談部に行けば、あとはすべて試験勉強に没頭できる。見ていろ!林! 俺は絶対に受かってやる。

  弁護士 田中 清