銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

大学43 論文式試験その1

 論文式試験は、昭和43年7月1日から7月5日まで、京都大学法経1番教室で行われた。時計台の真下の教室であり、500人が入れる京大でも最も大きな教室であった。
 法経1番教室の机は、それぞれ樫の1枚板でできていたが、その年の暮れの大学紛争で、学生が法経1番教室に立てこもり、奥田東総長と徹夜の団体交渉をしたときに、暖を取るために、机を全部燃やしてしまったと聞いた。我々の恩師の民法の於保不二雄教授がこのことについて「あの樫の1枚板の机は、2度と作れないだろう。惜しいことをした」と嘆いていらっしゃったのが思い出される。

 1日目、最初の科目は憲法であった。その第1問を見て驚いた。「法の支配が憲法にどのように現れているか」という問題である。おそらく、この問題を予想した受験生は、皆無だったと思う。
出た問題は、仕方がない。どのような答案を書いたかは覚えていないが、多分「国会が国権の最高機関であり、衆議院及び参議院で組織されるが、そこで法律を作ること、その両議院の議員は、国民の選挙で選ばれること、いわば、国民が間接的に法律を作る建前になっていること、憲法59条の法律案の議決と衆議院の優越、国会が作った法律を、内閣が執行し、裁判所が具体的に法律を解釈して裁判をする、裁判官は、その良心に従って独立してその職権を行い、憲法と法律にのみ拘束されること、いわば、憲法及び法律は、裁判官を拘束すること、憲法の条文の多くに『法律の定めるところにより』(例・17条、26条、31条)『法律でこれを定める』(例・27条、29条)などの規定があり、国会が定める法律に委任していること」などを書いた記憶がある。しかし、答案には、全く自信がなかった。したがって、自己採点では△とした。
憲法のもう1問は、「憲法81条の違憲立法審査権の規定が憲法裁判所の性格を有すると考えるべきかどうか」というような問題である。この問題は、通常の勉強さえしていれば、解ける問題であり、自分でも満足のいく答案が書けたと思う。自己採点では◎であった。

 1日目の午後は、民法である。
 1問目は事例問題であり、抵当権の物上保証人Xが被担保債権の消滅時効を援用できるか、物上保証人Xが被担保債権の一部を支払ったときの主債務者Aへの求償権の問題、主債務者Aが消滅時効完成後に債務の支払いをした場合とXの地位(さらに消滅時効を援用できるか)という問題であったと記憶する。
 一応満足がいく回答ができたと思ったが、自己採点は○とした。
 2問目は、夫Aと妻Bの日常家事代理権と表見代理の問題、両者が離婚した場合のA、B、及び取引関係に立ったCとの法律関係の問題であったと記憶する。一応書けたので、自己採点は○とした。

 ともかく、1日目は終わった。しかし、憲法第1問は、全く自信がなく、落ちるかもしれないと思った。

 弁護士 田中 清