銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

大学52 口述試験

 いよいよ、口述試験のために東京に向かうことになった。東京は、中学校の修学旅行以来である。
 母が、京都駅まで送ってくれ、生まれて初めての新幹線に乗ることになった。
 京都駅で、母と2人で「試験に勝つように」という意味で、縁起を担いで、カツ丼を食べた。
 快晴だったので、新幹線から富士山が良く見えた。これも生まれて初めての綺麗な富士山を見たことになる。
 東京駅の新幹線ホームまで土居が迎えに来てくれ、中央線で四谷駅まで行き、宿舎の長崎寮まで連れて行ってもらった。
 そして、土居が、試験会場まで親切に教えてくれ、下見に付いて行ってくれた。「中央線の四谷から新宿までは、快速で1駅や。どんな電車でも止まるからね。新宿駅から小田急線のホームまで行き、各駅停車で参宮橋駅まで行くんや」と言いながら、実際に参宮橋駅まで行ってくれた。

 再び長崎寮に戻り、同じく口述試験のために泊まっていた浜本さんと瀬戸さんに挨拶をした。2人とも京大の先輩で、2学年上の人だった。

 口述試験は8日間にわたって、全科目について行われた。
 細かい問題については、ほとんど忘れたが、刑法の問題で、「膨満というおなかが膨れる病気がある。ある女の人が、膨満の病気に罹って、妊娠をしたと勘違いをして、堕胎手術をした。これは、堕胎罪に当たるかね」と言われたので、「私は、不能犯だと思います」と答えた。「それでは、彼女は、妊娠ではないことを知っていて、堕胎手術をした、この場合、堕胎罪の故意は成立するかね」とおっしゃるので、「私は、故意は成立しないと思います」と答えると、「ほう、どうしてかね」とおっしゃったので、「未遂に終わらせる故意では、故意は成立しないと思います」というと、満足そうに頷かれて、「はい、結構です」と言って解放された。
 商法の会社法の問題では、細かい株主総会や取締役会の手続を聞かれたが、その前の受験者が司法試験用六法の該当箇所を開けておいてくれたので、すべてスムーズに答えることができた。
 嫌だったのは、会計学だった。非常に意地悪な質問を次々と浴びせられ、私は、手を振りながら、説明しようとすると、「君、手真似はいい」と言われ、注意をされた。会計学論文式試験がやさしかっただけに油断をしていたが、余りにも厳しい試験に愕然とした。
 とにかく、試験はすべて終わった。余り良くできたとは言えないものの、口述試験ではほとんど落ちないと言われていたので、「なんとか合格したのではないか」と思っていた。
 
  弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)