銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

出生その10 収穫の秋

秋は、虫の音で始まる。
峠にある上の口バス停から自宅までは、かなりきつい下り坂道になっており、その途中に100メートルほどの竹藪がある。秋になると、この竹藪からクツワムシ、スズムシ、コオロギ、マツムシなどの大合唱が聞こえた。
竹藪を過ぎると天の川をはじめ、満点の星がきらめいた。「あれが、さそり座のアンタレス。あれが、こと座のベガ。あれが、わし座のアルタイル。あれが白鳥座のデネブ」などと言いながら峠道を下ってきた。ベガとアルタイルは、七夕の織姫、彦星伝説でも知られている。
仲秋の名月も、冴えわたる空に浮かぶ月は、本当に美しかった。
今では、村でも街灯がつき、まわりも明るいので、降り注ぐような星空は見られなくなった。

秋は、収穫でも多忙であった。まず、稲刈り、稲架掛け、脱穀、乾燥、臼引などの仕事が次々と始まる。「猫の手も借りたい」という農繁期で、各家庭の子供たちも当然のようにこれらの手伝いをした。
子供のころ、稲刈り、稲架掛け、乾燥は全部手作業であった。脱穀は足踏み脱穀機であり、直径1メートルほどの表面に金具がいっぱい付いている丸い樽のようなものを足踏み機械で回し、その金具で稲の穂を弾き飛ばす。すべての稲を脱穀するのは、大変な重労働であった。臼引は、一日をかけて機械でモミを玄米にする作業であるが、非常に埃っぽい作業であり、鼻をかむと真っ黒な鼻汁が出た。
それでも、苗代作り、田植から始まる農作業は、臼引で終わる。両親もどこか安心したような心の底から出てくる明るい笑顔であった。
弁護士 田中 清