銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

出生その12 芋粥

芥川龍之介の作品に、「芋粥」という話があります。
この芋粥こそ、自然薯のお粥なのです。
都に五位という風采の上がらない貴族がいました。この人は、年に1回食べることができる芋粥が大好物で、「いつか腹一杯食べてみたい」とつぶやいたのです。
それを聞いた先輩貴族が、「食べさせてやろう」と五位を誘って、越前の国まで連れて行きます。五位は、楽しみにして越前の国まで連れられて行きました。このとき既に、五位は、自分の浅はかな欲望に幻滅していたようです。
翌朝、屋敷に山のように積まれた自然薯を見て、五位は、食欲が失せるのを感じました。
やがて、器に芋粥が盛られて、五位の下に差し出されたとき、五位はもう食べたくなくなっていたのです。それでも越前まで連れてきてくれた先輩の貴族に悪いと思って1杯だけいただきます。
先輩貴族は、「もう一杯いかがですか」と聞いたとき、「いや、もう結構です」と答えます。

以上のような話があります。正確な記憶はありませんが、確か上記のような話だったと思います。
おそらく、手に入れたいと思うまでの精神的な過程が幸せで、手に入れてしまうともうそれには興味がなくなってしまうということでしょう。
なぜ、この話を書いたかというと、前回自然薯の話を書いたので、思い出したのです。そうです。この話は、確か摂政藤原基経のころの話だったと思いますので、約1100年も前の話です。そのころから私たちの先祖は、自然薯を掘っていたと思うと、私自身、先祖を身近に感じるのです。
弁護士 田中 清