銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

尼崎23 本庁刑事合議事件その3

 尼崎支部3年目の仕事として、尼崎支部民事単独事件、伊丹支部刑事単独事件のほかに、神戸本庁刑事合議事件がありました。この事件は、参議院全国区の著名なA国会議員の総括主宰者であったM氏の選挙違反事件で、全面否認事件でした。
 総括主宰者であるMが公職選挙法違反事件で有罪となると、A国会議員は、当選が無効となってしまいます。したがって、Mは全面否認をして、検面調書(第三者の検察官に対する供述調書)をほとんど全部不同意としましたので、検察官は、否認となった検面調書については撤回し、証人尋問という形で取り調べざるを得ないことになるのです。もちろん、大きな事件ですので、刑事裁定合議事件になっておりました。
 刑事合議事件には、法定合議事件と裁定合議事件があります。法定合議事件は、短期1年以上の懲役又は禁固の事件で、殺人事件、放火事件、強姦事件、公文書偽造事件などが典型的な事件で、必ず合議体で審理裁判しなければならないことになっています。また、短期1年以上の懲役又は禁固の事件ではないのですが、複雑困難な事件や社会的に問題となった重大な事件については、裁判官が合議の上で「合議体で審理裁判する」と決定しますが、そのような事件は、裁定合議事件といって、合議体で審理裁判します。
 本件は、著名な事件ですし、複雑困難な事件でしたので、裁定合議事件となったものです。
 私は、昭和51年4月から、月に2回〜3回本庁に出張し、1開廷につき午前10時から午後5時まで、2〜3人の証人尋問に立ち会いました。そして、2カ月に1回は広島、名古屋、岡山などに出張し、出張証人尋問に立ち会ったことも、よく覚えております。
 しかも、公職選挙法違反事件は、法律上、100日裁判といって、非常に急いで裁判しなければならない事件ですので、刑事合議法廷を月に2〜3回は、どうしても開廷し、審理を急いでいたものと思われます(刑事部は、1週間に1回しか開廷日がなく、しかも法定合議事件も相当ございますので、A国会議員事件の本庁刑事部に占める負担は相当大きかったものと思います。)。
 しかし、私は、平成52年4月には確実に転勤の時期でしたので、A国会議員事件の判決を書くことは予想されておりませんでした。

  弁護士法人銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清