銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

訟務検事への転勤その2

 訟務検事とは何か? 私は、当時それも知りませんでした。

 「国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律」という法律があり、小六法にも掲載されていない法律です。

 その第1条には、「国を当事者又は参加人とする訴訟については、法務大臣が、国を代表する。」との記載があり、第6条にも、「行政庁を当事者とする訴訟は、法務大臣の指揮を受けるものとする」旨の記載があります。

 そして、「法務大臣は、国を当事者又は参加人とする訴訟及び行政庁を当事者とする訴訟については、所部の職員でその指定する者にその訴訟を行わせることができる」旨の規定があるのです。

 要するに国や行政庁を当事者とする訴訟が提起されたときには、訟務検事や法務省・法務局の職員が弁護士となって、その訴訟を追行するのです。しかし、国や行政庁を当事者とする訴訟は、重大な訴訟が多く、司法試験に合格した裁判官や検察官が法務省や法務局の職員の身分になって、その訴訟を追行する訳です。

 

 私は、内示を受けた後に、金田裁判長に対し「福岡法務局の訟務検事の内示を受けました。私は、裁判官ならどんな遠くにでも行きたいと思うのですが、正直言って訟務検事には行きたくありません。断ってもよいでしょうか」と言いました。

 金田裁判長は、「いやあ、いいと思うよ。訟務検事を経験して立派な裁判官になった人は山ほどいるよ。栄転だと思うよ」とおっしゃったのです。私は、「しかし、私は断りたいのです。駄目でしょうか」と言いますと、金田裁判長は、「裁判官の転勤でも断る人は時々居るから、ましてや裁判官以外なら断ることはできると思うよ。しかし、私は、田中さんのために、是非行った方がいいと思うよ。」とおっしゃいました。

 私は、家に帰って妻に相談しました。妻は、「行きましょうよ。金田裁判長がおっしゃるとおり、行った方がいいと思うわよ」ということでした。

 

弁護士法人銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清)