銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

身体検査での上京 その1

 4回生11月のことだった。母の退院の次の日に、法律相談部を覗いたとき、3年先輩の西村重雄さん(京大労働法助手・後の九州大学法学部教授)がやってきて、「田中さん。司法試験合格したんだってね。今度東京に行ったら、野崎幸雄裁判官のところを是非訪ねたらいいよ。法相の10年くらい先輩の人だよ」といって、電話番号まで教えていただいた。
 私は、「分かりました。是非お伺いします」といって、西村先輩にお礼を言った。

 同43年11月15日ころ、私は、司法修習生の身体検査と入所説明会のために上京することになった。たまたまこのとき、茨木高校同クラスで、京大教育学部に在学していた池谷成典君も用事があって上京することになり、お互いにお金がないので、夜行列車で行こうということになった。前日の夕方、京都駅から東京行きの夜行列車の自由席に乗り合わせたが、列車は満員で、通路に新聞紙を敷いて雑魚寝の状態だった。丁度隣に居合わせた吉原さんという40歳くらいの看護婦さんから声を掛けられた。吉原さんは、川崎に自宅があり、中学1年生の男の子と小学5年生の女の子がおり、大きな病院に勤務されていたが、京都で学会があり、その帰りということだった。私たちも聞かれるままに何のために上京するかを説明したところ、「是非遊びに来てほしい」と言われ、住所と電話番号をいただいた。
 私も、嗣郎と土居を除いて、東京に知合いは全く居ない。吉原さんと余りにも長い間、話をしたので、東京で司法修習生になったときは、「行ってみようかな」と思っていた。
 東京駅で吉原さんと別れたが、別れ際に、「本当に連絡くださいね。待っています」と念を押された。
 池谷と2人で土居の家に転がり込んだ時は、午前8時ころだった。
 このときに、車窓から見た朝明けの高円寺駅阿佐ヶ谷駅の光景は、今も忘れない。そして、電車に乗るたびに、「そのときの光景は今も同じだな」との感を強くする。

 弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)