大学その１５ Ｋ子宅訪問

　大学その１０から、話が飛んでしまった。
　善福寺の別れ際に、Ｋ子から「田中さん、子供の日の５月５日に、私の家に来ていただけませんか」と言われたことを書いた。
　約束どおり、私は、５月５日にＫ子宅を訪問した。Ｋ子は一人娘であることを聞いていたが、ご両親のほかに、祖父夫妻も挨拶にこられたことにまず驚いた。
　大きな家で１町歩近い田を所有し、耕作している家だった。お父さんは、学校の先生をしていらっしゃった。
　心づくしのご馳走をいただいたあと、話をしたり、Ｋ子の昔のアルバムを見たりして過ごした。
　その中で、お爺さんから、「田中さん、将来、是非Ｋ子と結婚して、私の家に来てください」と何度も要請された。
　お母さんからは、「Ｋ子は、毎日朝から晩まで田中さんのことを話しているんですよ。この子は、田中さんのことが、好きで好きでたまらないんですよ」と言われ、そばでＫ子が「もう、そんなことまで言って」と、諌めていた。

　Ｋ子の私を思う気持ちが十分分かったのは嬉しかったが、お爺さんから結婚してほしいと言われたことは、私の心に重く圧しかかった。このとき、私は、１９歳になったばかりである。また、交際してから１か月も経っていないときである。結婚は、まだまだ先の話と思っていただけに、現実の話となったことは、正直いって辛かった。

　弁護士　田中　清