銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

大学45 論文式試験その3

 商法の論文式試験は、2日目の午後だった。
 商法は、会社法から1題、手形・小切手法から1題というのが通例であった。
 商法第1問は、「株式会社につき、合併、営業譲渡及び営業用財産の譲渡の第三者に関する法的規制の主要な相違点を述べよ」というものだった。まず、会社法から1題と予想していたのに、商法総則から出題されたことに驚いた。
 また、私は、ここで大失敗をした。私は、上記の問題を「株式会社につき、合併、営業譲渡及び営業用財産の譲渡の主要な相違点を述べよ」と読み違えたのである。すなわち、「第三者に関する法的規制の」という文章を読み飛ばしてしまったのである。主要な相違点を概ね書き終えたところで50分を費やしていた。そこで、もう一度問題をみたとき、「第三者に関する法的規制の」という文章を読み飛ばしていたことに気付き、最初から書き直すことにした。しかし、書き直しに、予想外の時間が掛かり、40分くらいを費やしてしまった。
 あと30分で、商法第2問の手形・小切手法の問題を答えなければならない。すなわち、第2問は、「1 甲が、後日金額を自分で記入する旨を述べて、金額欄白地の手形を乙に交付したところ乙がほしいままに白地を補充して丙に譲渡した。2 受取人白地の白地手形の所持人が、白地のままで手形金請求をした場合、その効果はどうか。3 満期白地の白地手形の所持人は、主たる債務者に対して、いつまでに手形上の権利を行使しなければならないか。4 5万円の範囲内で補充すべき約束で、甲から金額白地の白地手形を受け取った乙が、そのまま丙に譲渡し、丙が10万円と補充した場合、丙と甲との関係はどうなるか」という問題である。
 問題自体は、典型的な白地手形とその補充の問題であり、難しい問題ではないが、時間が30分しかない。こんなときに限って、問題も商法第2問だけで4つの問いがあり、「時間がない!!」という叫びだけが心の中で渦巻く。必死になって解答を書いているうちに、どんどん血の気が引き、目の前が真っ暗になっていった。しかし、何とか書き上げたとき、終了のベルが鳴った。

 私の自己採点は、商法第1問は、△ないし○、商法第2問も△ないし○というものだった。明らかな間違いは無かったと思うが、解答文を読み返す時間が無かった。したがって、普段から汚い文字も一層汚かっただろうし、文章の間違い、誤字脱字があったかもしれない。読み返す時間があったら、書き落としていた論点に気づき、補充できたかもしれない。
 私の隣で受験していた北村が、「清ちゃん。気分でも悪かったんか?どんどん真っ青な顔になってきたんで、気分でも悪いのかと思ったよ」と言った。私は、「いや、商法第1問の問題文を読み間違えたんや。大失敗やったよ」と答えた。
 帰りの電車の中で、刑法第1問の保護法益を書かなかったことと、商法の問題の読み違えで時間が足りなかったことで、「落ちたかもしれない」と思わざるを得なかった。暗い気持ちで帰途についた。「まだ、決定的な間違いはない。」それだけが救いだと思った。

 弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)