銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

尼崎13 本庁民事合議事件のてん補

 昭和50年6月ころだったでしょうか。
 橋本支部長から「本庁から民事合議事件のてん補の要請があったので、田中さん、行ってもらえませんか。」と言われました。私は、2つ返事で「行かせていただきます。」と答えていました。民事の合議事件は、金沢地裁でも経験しましたが、尼崎支部の山田裁判長の外に、本庁の松浦裁判長のご指導を受けることができると思うと、期待が高まりました。
 橋本支部長は、「第2民事部の左陪席裁判官が精神的な病気になったので、事件処理ができなくなったそうです。そこで、尼崎支部から田中さんが、姫路支部から1人の左陪席にてん補を要請したということです。何でも大きな事件が2つ終結しており、この外に行政事件が7件ほど終結しているそうで、これらの判決を片付けるのが2人の仕事になりそうですね。松浦さん(裁判長)の話では、大きな事件2件を1人、行政事件7件を1人に担当してもらうということでした。」旨伝えられました。
 庵前裁判官に上記の話をすると、「田中さん、大きな事件2つをやった方が絶対に勉強になるよ。小さな事件を100件判決するよりも、大きな事件を1件判決する方が絶対に勉強になるよ」と言われました。庵前裁判官のこの言葉は、今でも鮮烈に覚えているほど印象的な言葉でした。

 2週間後神戸地裁本庁を訪ねましたが、正門の目の前に、日本一の暴力団山口組本部があったのには、驚きました。本庁第2民事部は、赤煉瓦作りの重厚な建物の一室にありました。
そこで、松浦裁判長が、私と姫路支部からてん補に来た菊地裁判官を目の前に置いて、「実は、左陪席が病気になって、10件くらいの起案しなければならない事件があります。私の考えでは、7件の行政事件と、2件の大きな事件の2グループに分けて、それぞれ担当してもらったらどうかと思っています。大きな事件は、それぞれ1件がダンボール箱7箱くらい、2件で15箱くらいあります。」と言われました。
 姫路支部からてん補に来た菊地裁判官は、私(23期)より2期下の25期でしたので、「どうぞ、菊地さんの方で、先にどちらのグループにするか選んでください」と言いますと、「田中さんには悪いですが、7件の行政事件のグループをやらせてください」と言いました。私は、庵前裁判官に事前に聞いていましたので、「それでは、私が大きな事件2つをやらせていただきます」と答えました。
 それから法廷に行き事件を再開した上で、再び終結する手続をしたと記憶しております。

 弁護士法人銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清