銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

高校26 田中先輩のアドバイス

 京大経済学部の願書も取り寄せ、大学の試験まで2カ月を切った。
 昭和40年1月15日の成人の日だったと思う。今日は成人の日なので、丁度49年前の成人の日のことである。私は、高槻二中、茨木高校の2学年上の先輩の田中稔先輩と連絡を取り、ご自宅を訪問した。
 田中先輩は、茨木高校卒業後、京都大学文学部に現役合格した人で、道で会えば挨拶をするが、常に連絡を取っていた方ではなかった。
 応接間に通され、お茶を出していただいたが、やさしく「今日は、どうしたの?」と聞かれた。私は、「実は、京大の経済学部を受けようと思っています。それで、大学の様子とかを伺いに参りました」というと、先輩は、「経済かぁ。経済はなんで受けるの?」と聞かれたので、「公認会計士の試験を受けようと思っています」と答えた。田中先輩は、「経済は、止めた方がええぞ。全然面白くないぞ。法学部がええのんと違うか」と言い放つ。私はびっくりして「えっ、どうしてですか?」と聞くと、「1つは、法学部は、人が出てくる。経済は、人が出てこないので学問として面白くない。2つには、法学部に行って、司法試験を受けたらいい。これは、裁判官、検察官、弁護士になる試験や。これに受かったら将来は安泰やし、面白い。3つには、公務員上級試験も京大はまだ何人も合格し、活躍している。4つには東大と張り合えるのは、今や、法学部しかない。法学部はいろいろな道が広がっている。就職も潰しが効く」と立て板に水のようにおっしゃった。この中で、私は、司法試験に大いに興味を持った。
 私は、茨木高校での学内模擬試験の成績を持っていたので、田中先輩に見てもらった。田中先輩は、「うん。この成績なら受かるのと違うか。頑張って現役で入って来いや」とおっしゃった。
 帰り道、ずっと田中先輩の言葉を繰り返した。今まで、兄貴に言われて経済学部に行き、公認会計士になると決めていたが、良く考えれば経済学部や公認会計士がどんなものか、全く分からなかった。帰る道すがら、私は、法学部に行って、司法試験を受けてみたいと考えていた。
 私は、なぜ、田中先輩のところに行ったのか分からない。スーちゃんが第1の恩人なら、田中先輩は、第2の恩人である。今になって思うと、ご先祖様が、スーちゃんや田中先輩の口を借りて、私を間違った方向に行かないようにギリギリのところで方向修正していただいているような気がする。
 特に、田中先輩のアドバイスは、私の一生を決定付けた一言だった。
 そして、家に帰って、机の引き出しを探したが、どこを探しても経済学部の願書は見当たらなかった。「いいや、どうせ使わない願書だから。今から法学部の願書を取り寄せよう」と強く誓った。
 なぜ、田中先輩のところを訪問したのだろうか、田中先輩に会うのがあと1か月遅れていたらどうなったであろうか。田中先輩が留守だったらどうなったか、いろいろ思うと、本当に不思議な出来事であった。
弁護士 田中 清(弁護士法人銀座ファースト法律事務所)