銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

大学その10 K子善福寺の誓い

 昭和41年4月中ころから次第に司法試験のことが気になりはじめていた。
 「俺は何のために京大法学部に入ったのか。田中先輩に言われて、経済学部から法学部に志望学部を変更し、司法試験を受けるのではなかったのか」
 空手道部は、ほとんど毎日真面目に通っていたが、「これでいいのだろうか」と焦りのようなものを覚えてきた。
 K子と次に会ったのは、4月末の日曜日か天皇誕生日だったと思う。
 この直前に、「父親が借地をしていたのに、賃借人である父親の長男名義で建物の登記をしていた場合に、土地の譲受人にによる借地権を対抗することができない旨の最高裁判決(昭和41年4月27日判決)」が出て、新聞の一面トップを賑わせていた。その直後のデートだったので、K子との間でもその判決の話題をした。
 私たちは、善福寺という京都の北の方にあるお寺に行ったところ、ちょうど躑躅の花が満開だった。見学をしていたのは、私たち2人だけであり、本当にいい天気であり、腰掛に適当な石の上に座り、二人で躑躅の花を眺めていた。
 私は、このときに、司法試験を受けたいと思っていること、そのためには空手道部を退部したいと思っていることを告げた。
 彼女は、じっと黙って聞いていたが、やがて「田中さんの邪魔にならないように一生懸命応援します」と言ってくれた。私は、このときの誓いを、「K子善福寺の誓い」と名付け、誓いを忘れないようにしようと思った。
K子は、別れる前に「田中さん、子供の日の5月5日に、私の家に来ていただけませんか」と言われたので、「うん、いいよ」と言って別れた。
 弁護士 田中 清