高校34 大学合格
入試が終わってから1週間が過ぎた。
スーちゃんから、「清さん、どうやった?」と電話が入った。「あかん。落ちたかもしれへん。スーちゃんは?」と聞くと、「まあ、大丈夫と違うかな」と自信のある様子だった。私は、受けるまでは楽観的、試験が終わってからは悲観的な予測をするのだが、スーちゃんは、受けるまでは悲観的、受けてからは楽観的と、私と逆の性格だった。
「スーちゃん、遊びに行かへんか」と誘ってみた。「よっしゃ。行こか。明日行こう」と即断即決だった。
2人で枚方公園に遊びに行った。一日中遊び回り、受験のことはすっかり忘れていた。落ちたら滋賀大の受験に行かなければならない。しかし、全く受験に行く気が起こらない。結局、参考書を1頁も捲らないままに、京大の合格発表の日を迎えた。
合格発表は、土居と行く約束をしていた。数学が易しかっただけに、合格最低点が跳ね上がるのが一番恐かった。
土居と一緒に京大の法経4番教室の横に行くと、コンクリートの壁に270人の合格者の名前が貼り出されてあった。
「あった!」
私は、土居に気遣って小さな叫び声を上げた。土居と嗣郎の名前は無かった。
土居が「おめでとう」と言って握手を求めてきた。土居が落ちただけに、どう答えていいか分からず、小さな声で「ありがとう」と言ってその手を握り返した。
土居が、「清さん、合格祝いに何か食べようや。俺が奢るよ」と言った。東山通りをぶらぶらと下って行くと、餃子屋さんがあり、そこで、生まれて初めての揚げ餃子を食べた。合格を喜ぶ訳にいかず、お通夜のような食事だった。
その日、帰ってから、両親に合格を報告すると、母は、土間に裸足のまま飛び降りて、私の手を握って喜んだ。私は、母がこれほど喜んだ姿を見たことがない。本当に合格して良かったと思った。そして、両親のお蔭で大学に行かせてもらえることを嬉しく思った。