銀座ファースト法律事務所所長のつぶやき

弁護士田中清のブログ。最近気になることや、趣味のことなど雑記。

尼崎その4 少年事件3

 集団審判で、冒頭に、少年鑑別所送致の少年がいないと、やや、少年たちの緊張感が薄れます。スピード違反を犯した少年に、「スピード違反はなぜしてはいけないのか」と聞きますと、「なぜ悪いんですか、僕は悪くないと思います。僕は、運転がうまいし、誰にも迷惑を掛けていません。」などといいますと、会場から笑いさえ起こることがあります。
 私は、そのようなとき、他の少年への影響を慮って、「あなたは、別室で審判しますので、保護者の方と一緒に退場して、残って廊下で待っていてください。」と言い、他の少年を先に審判します。

 廊下に残った少年を審判室に入れて、私は、「なぜ、他の少年が居る前で、あのような言い方をしたのだ。君は、法定速度を40キロもオーバーしているのだろう?全く反省していないということか」と聞きますと、保護者から叱られていたのか、「申し訳ありませんでした。」と答えます。そして、「今度だけは許してあげるから、今度から違反をしないように気を付けなさいよ」と言って、その場で不処分の言渡しをします。少年と保護者が深々と頭を下げて帰られるのは、いうまでもありません。
 調査官は、「この少年は、自己顕示欲が強いのです。大勢の少年たちの前で、反省しているとは決して言えないのです。でも、心の中では反省しているとは思いますよ。」と言いました。私は、「この世の中には、私と同じような行動をする人ばかりとはいえない。私と違う性格の人がいるし、違う行動を取る人がいることを理解しなければならない。」と思いました。

 金沢時代の上野裁判官から「田中さん、『金は怒らず』なんだよ。感情で裁判してはいけないよ」という忠告が未だに忘れられません。
 この残った少年について、感情的に裁判する裁判官も皆無とはいいませんが、私は、絶対に感情で裁判してはいけないと、改めて思いました。

 弁護士法人銀座ファースト法律事務所 弁護士 田中 清